相続税 2018.04.12

遺産相続で節税するためにできること

遺産相続で相続させる遺産額が多ければ多いほど、高額の相続税がかかります。また、相続税は相続人にとって重い負担となります。一方、被相続人が生前から相続税の節税対策を行っておくなら、相続人は少ない税負担で済むでしょう。

遺産相続対策には、遺産分割対策、納税資金対策、節税対策の3つがあります。今回は3つ目の「節税対策」についてご紹介します。

記事ライター:棚田行政書士

産相続における節税対策の基本

節税対策のためにはまず、現時点でどのくらいの財産があり、評価額はいくらなのか、遺産相続で相続税はいくらかかりそうか、納税資金は確保できているかなどを把握することが必要です。

この時点で遺産相続の際の相続税はかからないと分かれば、現時点では節税対策は必要ないでしょう。一方で、相続税がかかりそうな状況で、納税資金が手元にないとすれば、節税対策を進めると共に、財産を売却して納税資金を集めておくなどの対策も必要になるでしょう。

節税対策の基本的な方法は、

1:遺産相続で相続される財産を減らしておくこと
2:遺産相続で相続される財産の評価額を下げておくこと
3:税額軽減などの制度を活用すること

の3つです。

 

節税対策1:遺産相続される相続財産を減らしておく

遺産相続で相続させる財産の額が多く、多少減らしても自身の生活に影響はない人であれば、可能な範囲で、遺産相続で相続させる遺産の額を減らしておくことで節税ができます。

例えば、次のような節税方法があります。

遺産相続の相続人などへの少額の生前贈与

一度に多額の贈与をすると贈与税がかかってしまいますが、年間110万円以下の贈与であれば、贈与税をかけずに贈与できます。この贈与は遺産相続の相続人ではない人にも行えるので、孫などへ贈ることもできます。

配偶者への自宅の贈与

婚姻期間20年以上の夫婦であれば、贈与税の配偶者控除制度で節税できます。この制度を活用すれば、居住用不動産そのものや居住用不動産を取得するための金銭を夫婦間で贈与した場合に2000万円までの控除が適用され、大幅な節税ができます。

生命保険の非課税枠の活用

生命保険の保険金には、「500万円×法定相続人の数」で算出される相続税の非課税枠があります。この節税対策は、遺産相続の被相続人を契約者また被保険者とし、遺産相続の相続人を受取人とする生命保険に限り有効です。

墓地などの購入

墓地や墓石、仏壇などの祭祀財産は非課税のため、遺産相続が始まる前に購入しておくことで相続財産を減らすことができます。

 

節税対策2:遺産相続される財産の評価額を下げておく

遊休地に賃貸物件を建てる

空地を空地のままにしておくと自用地として評価されますが、マンションなどの貸家建築をすることで評価額を下げ、節税することができます。

宅地利用区分の変更

土地は、宅地・田・畑・雑種地などの区分によって評価額が変わります。評価の高い土地があるなら、土地の一部の用途を変えることにより、評価額を下げ節税することができます。

小規模宅地等の特例の活用

アパートやマンションの敷地は「貸付事業用宅地」として、200㎡までは50%引きの評価となり、大きな節税効果を持ちます。

 

節税対策3:遺産相続の税額軽減制度などを活用する

孫へ一代飛び越して贈与する

普通の遺産相続では、親から子へ・子から孫へと財産が移動していき、その度に相続税がかかります。しかし、生前に孫へ贈与しておくなら、相続税の課税を1回免れることになります。この節税対策は生前に済ませておくべきでしょう。

遺産相続後でも孫への遺贈は可能ですが、この場合は2割増の相続税がかかってしまいます。

婿・嫁などとの養子縁組による法定相続人の増員

遺産相続の法定相続人の数は、相続税の基礎控除額に大きく影響します。養子がいない人であれば、婿や嫁などを養子とすることで、法定相続人の数を増やして節税できると共に、婿や嫁にも相続人として遺産相続をさせてあげられます。

実の子どもがいる場合は、1人の養子までなら、遺産相続で法定相続人に加えることができます。ちなみに、孫を養子にする場合はやはり2割増の相続税がかかってしまいますので注意しましょう。

配偶者の税額軽減制度の活用

遺産相続で配偶者が取得する遺産は、法定相続分または1億6,000万円のどちらか大きい額までは相続税がかかりません。

 

まとめ

遺産相続でかかる相続税を節税するためには、生前の早いうちから可能な節税対策を講じておくことが必要です。ただし、節税対策をやりすぎてしまうと遺産相続させる側の生活も困ってしまいますので、慎重に進めていきましょう。

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